簿記のいろいろ
4建設業経理事務士検定試験

(1)建設業経理事務士検定試験とは

建設業経理事務士検定試験とは、建設業振興基金が主催する、建設業界における簿記検定だとお考えください。そうすると、「なーんだ、狭い範囲の簿記検定か」と思われるかもしれませんが、何と、日本人の10人に1人は建設業に関わって生活しているのだそうです。しかも、建設会社にとっては、公共工事の入札をする際にこの建設業経理事務士の合格者をどれだけ抱えているかが審査事項の1つになっている(人数が一定のラインを超えないと入札しても落札できないことになりかねない)ので、重要な意味のある資格なのです。 したがって、合格者には一定の手当を支給する会社も多いそうです。

建設業経理事務士検定試験データ

受験資格 特になし
試験日程 毎年3月上旬の日曜
1級から4級
(ただし、1級は財務諸表・原価計算・財務分析に分かれています)
申込 11月上旬から下旬(平成15年度実績)
*申込期間は変更することがありますので、早めにお問い合わせください。
(03−5473−4581)
合格発表 5月末

(2)各級の概要

1)3級

建設業経理事務士3級の合格率は約60%と高く、試験内容のほとんどは、日商簿記3級の内容と同じです。ですから日商3級の知識をベースにして建設業簿記の特徴(おもに用いる勘定科目に特徴があります)を理解し、その独特の処理である完成工事原価の計算をマスターすれば大体は合格レベルに達することができます。
ちなみに、建設業簿記で用いる勘定科目を紹介しておきますと、例えば、日商3級で用いる「売上」は「完成工事高」、「売上原価」は「完成工事原価」として仕訳します。これは一見すると難しそうに見えるのですが、よく見ると「売上」という言葉が「完成工事」に変わっただけのことですから大丈夫でしょう。
また「未成工事支出金」といった科目も出てきますが、これは、読んで字のごとくで「未だ完成していない工事に対する支出金」つまり「工事中の工事原価」を表す科目です。
このように目新しい科目もよく見ると何てことないことに気付くでしょう。

3級受験データ

試験時間 2時間
平均合格率 約60%

2)2級

建設業経理事務士2級の合格率は通常40%以上あり、その試験内容には日商2級と同様に商業簿記工業簿記があります。商業簿記は工事収益の計上基準のところと、減価償却費などが毎月計上される点にさえ気を付ければ、最近、試験範囲に加わった本支店会計を含めて日商2級の知識でそのほとんどが対応できる内容です。
これに対して、工業簿記は、建設業独特の外注費の考え方や現場共通費と言われる簿記検定でいう製造間接費の扱いに特に注意する必要があり、出題される問題もこういった論点に重点がおかれています。
ただし、日商2級で多くの受験生を苦しめる、標準原価計算や直接原価計算、CVP分析といった論点は試験範囲に入っていませんので、全体的には簿記検定の2級よりも楽だとおもわれます。ですから日商2級を学んできた方は、上記の点を注意し、過去問題を解き進めることを中心に学習していくことで合格を勝ち取れることでしょう。
ちなみに日商3級の学習をしていて、建設業経理事務士の合格を目指される方には、3級・2級の同時受験をお勧めします。この試験は年に1回しかない試験ですし、2級と1級の同時受験は出来ないシステムになっていますので、2級を残してしまうと来年に2級、再来年から1級と、余りに長期間を費やしてしまうことになるからです。

2級受験データ

試験時間 2時間
平均合格率 約50%

3)1級

建設業経理事務士は、財務諸表原価計算財務分析と3科目すべてに合格してはじめて、1級に合格したことになります。一方、1年に1回しか試験がないので1科目を残したために1年間待たなければならなくなってしまうこともあります。したがって、この試験に臨むに当たっては、各科目の特徴を把握し、合格までの戦略を練ることが大切です。

・財務諸表の特徴と対策
財務諸表は、第1問で理論の記述問題が出題される以外は、仕訳や適語補充、金額計算の問題から第5問で毎回出題される精算表の作成問題に至るまで、日商1級を学習してきた方なら十分に解答できるレベルです(但し、費用の見積り額を計算し、それを月割りして製造原価に加え、期末に調整する処理には注意して下さい)。
ですから、日商2級の学習を終えた方が、建設業経理事務士の勉強を始め、最初に挑戦するのに最も適した科目だと考えられます。過去に出題された問題を中心に学習していくことで、合格レベルに達することができます。

1級財務諸表受験データ

試験時間 1時間30分
平均合格率 約15%

・財務分析の特徴と対策
財務分析は日商簿記検定の試験範囲になっていない事もあって、最もなじみのない分野でしょう。しかし、この科目は財務諸表を作成したあとからがスタートのため(難しい日々の取引や、決算処理はありません)、一言で言うと「比率[当座預金比率や経常利益率などの特殊比率]を覚えて(各科目に適用して)計算するだけ」の科目です。したがって、学問的な難しさもなく、最も短期間で学習を終える事が出来る科目です。
しかも、第1問の理論問題も、高い確率で分析手法から出題されているので予想がしやすいという特徴もあります。

1級財務分析受験データ

試験時間 1時間30分
平均合格率 約20%

・原価計算の特徴と対策
原価計算でも、第1問に理論の記述問題が出題されます。しかし、他の科目と同様、この第1問が完璧に解答できる受験生は多くありません。したがって、この問題の出来不出来が直接、合否につながるとは考えなくてよいでしょう。原価計算で大事なところは、第3問でよく出題される「社内損料計算制度」と、第5問で毎回出題されている「工事原価計算表の作成問題」です。どちらも建設業の特徴を踏まえて解答しなければならない問題ですが、毎回同じパターンの問題が出題され、しかも、試験範囲の改定などもないため比較的取組みやすい科目だと思われます。また過去の合格率で見ると3科目の中では毎回、安定的に合格率が高い科目です。建設業界で働いている方で、この1級の試験に挑戦する方の多くがこの科目から始めておられるようです。なお、日商1級を学んでこられた方にとっては、個別原価計算までしか試験範囲になっていない(意思決定会計もなければ標準原価計算もない)この科目は受験しやすい科目ではないでしょうか。

1級原価計算受験データ

試験時間 1時間30分
平均合格率 約35%

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